【外観デザインの話】

●外観デザインのキモ! 上級者編 "樋"

家のデザインをするにあたって、今回は少ーしばかり、高度な(マニアックな)お話をしてみようと思います。
テーマは、"樋"(とい・とゆ)。
何だか、読みづらい言葉ですね。要は、皆さんよーくご存知の、屋根の端っこについている雨を受けるアレです。
どの家にもついていますよね。コレがなけりゃ雨の日に、屋根のそこいら中から雨のしずくが落ちて来ます。
この"樋"というヤツ。あって当たり前! で、なけりゃ困るけど、目立たない。皆さんも普段目にしてはいても、そんなに気にしてマジマジと眺めることもなく、あまり気にもかけられない「地味で、控えめ」で、でも、家の機能としては絶対に欠かせない、ある意味「縁の下の力持ち、ならぬ軒(のき)の下のチカラ持ち」なのですね。
正確には、屋根の縁に沿って横向きについているのが「横樋」で、それが受けた雨を地面に落とす縦向きのヤツが、「たて樋」といいます。

この"樋"について、皆さんどう思われます?

えっ?なんとも思わない?そうですよね。フツー何とも思わないですよね。

でも、とっても大事なのですよー!

この"樋"というヤツ。結構、重要なのですよ!家の外観を決める上で!

家のデザインの話になると、十人が十人みーーんなが屋根の形、壁の素材や色、窓のデザイン、全体のバランスや色合い、まぁ、せいぜい庭やエントランスを含めた「いわゆる家全体のデザイン」が検討の中心になります。
「この写真集に出ているこんな屋根がイイ!」「壁の質感はこんなイメージかな」「家全体のテイストは、フランスの田舎町の……」「アーリーアメリカン調の落ち着いたデザインが……」なんて。

もちろん、それはとても大切なことです。

しかーーーーし! と声を大にしてワタシは言いたい!!

普段目立たないコノ"樋"というヤツは、家全体のデザイン、イメージを決定づけるのに決して侮ることのできない重要な役割を持っているのだ!ということを。

少しレイセーになってみてください。(って、ワタシがイチバン、コーフンしてますが…)

近所のお寺とか神社を見にいってみてください。
そして屋根を見てみてください。

そう、特に古〜いお寺や神社の屋根には、"樋"がついていないのです!
(いやいや寄付ボッタクリの、「そんなモン必要ないやろー!」と思わずツッコミたくなるようなどこかのゴーカなビルみたいな現代風のお寺や神社は別デスヨ。)

そうです。古〜く、何だかほっとするようなお寺なんかには、まず"樋"はついてないことが多いのです。
なぜなら、お寺なんかは軒が長くて雨だれがしても壁にはかからない。
また、樋があって雨だれがなければ、軒から垂れる雨の雫を見て、風流を感じたり、雨にまつわる名句が生まれたりしなかったのかもしれませんね。

このように、"あって当たり前"のもの(樋)は、"ない"ということには気づかない。
古い木造建築のお寺や神社には、樋がないことが多く、それがあの神社仏閣などの立派で静かに落ち着いたイメージや雰囲気を醸し出している、とも言えるのかもしれません。

シンプルで洗練されたデザインを活かすため、正面に横樋をつけないデザインに。

サイドの縦樋1

サイドの縦樋2

シルバーのポール2本のうち1本が縦樋で、1本はダミー(実際には使わない)。 このようにラインを2本にすることによって、 樋のイメージをなくし外観デザイン上のアクセントを持たせています。
まあ、それは極論としても、"樋"が建物全体のデザインに大きな影響を与えていることは間違いなのです。

ケッコウあるのですよ。せっかくのいいデザインの家に仕上がったのに、この"樋"ひとつで、外観が台無しになっちゃってる家。

かといって、現実的には私たちが普段使う家に"樋"をつけない訳にはいきません。


写真にあるように、"樋"ひとつで随分と見栄えが違ってくるのです。

「たかが"樋"。されど"樋"」。

私は、ある意味、「マイホームの画竜点睛」と言っても良いと思っています。
それだけ"樋"の扱い方で、家の出来が大きく違ってきます。

神経を使って、どう全体のデザインを考え、どんなデザインのものを、どう置くのか。

皆さんもぜひ一度、樋メインでご近所の家を見て回ってみてください。
きっと、何かを感じられるかと思いますよ。

と、いつものように、長々と、そして今回は「生意気にエラソーに」語ってしまいましたが、正直私自身、何年か前まで、"樋"のことなんか「ひとつの機能」として見ていたに過ぎなかったのデス。
ある時、同僚の設計者が「中元さん。ね、違うでしょ? これが大事なんですよ。ここにこだわらないと家づくりに携わる者として失格です」と静かに、厳しく、事例を見せてくれながら教えてくれたのです。

でも、本当に違うのです。
私自身 うちの設計マンに教わったことではありますが、それ以来、お客さんの家の「画竜点睛」の大きなポイントとして、しっかりこだわるようにしています。
まあ、あちこちにたくさんの設計者の皆さんがおられますが、おそらく"樋"にまでにこだわっている人はまず本当に少ないと思います。

普段気づきかれもしない"樋"が、家のデザインを決める!

ココが『上級者編』であるゆえんなのデス。



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