第九話 コストダウンのツボ!

家に限らず「できるだけ安く、良いものを!」と思うのは、世の常、人の常。特に 家というのは、もっとも高額なもののひとつですから、なおさらですね。
私なんかも、日々これとの闘い、と言っても過言ではないです。ハイ。
で、雑誌なんかでよく特集されるのが、「コストダウンのポイント」的な記事。皆 さんも興味深く読まれているのではないでしょうか。が、読んでみると、どうもおか しい。何がおかしいか、端的に言うと、そのほとんどがこうなのです。
「高いものを安いものに変えましょう。そうすればコストダウンできます!」
さらに、「フツーは使わないこんな特別な仕様のモノを、フツーのモノに変えましょ う!」と。
私から見ると、ほとんどがこんな話に見えてしまう。
「何のこっちゃ? あたり前やン!」と思わず突っ込んでしまいます。
少なくともこれを「コストダウン」とは言わない。これじゃぁただ、「単なるグレー ドダウン」じゃないか、と。

コストダウンというのはそんなに簡単なものじゃない、と思っています。
大阪では、ある意味「値切ってナンボ!」という風潮があたり前のようにありますか ら、まず、まるで挨拶のよーに「で、それ。ナンボ安くなるン?」と言われたりしま す。

この「で、ナンボ安くなるン?」という言葉、結構深いのデス。
つまり、この言葉の裏側には、暗に「モノのグレードは下げたらアカンでぇ。モノそ のまんまで、下げるのは金額だけでっせ。さあ、ナンボ安くなるンかいな?」という 意味が含まれているのです。
どこかの住宅雑誌のように、仮に「では、この部分をコレに変えて、○○円値下げで きます」なんて答えようものなら……。
まず十中八九、「そんなアホな! そんなモン、値引きとちゃうやン! 安いモンに 変えただけやン! アカン、アカン!」と。

このように、私たち関西人の生活の中では、無意識のうちに「コストダウン」と「グ レードダウン」の意味の違いをハッキリさせているのかも知れません。
要は、「おたくの儲けの幅を、も少し下げてェなぁ。そら、あんたも仕事ややからム リは言わん。気持ちや、気持ち」ということを言わんとしているのです。
これまた深い。
どういうことかいうと、「ムリは言わん」というのは、つまりその人は、「限界があ ること」をちゃーんと知っている。儲けがなくなるまでの値下げを要求しているわけ ではないんだと。
その上で、その限界がどまでなのかを探ってる。つまり、価格の面でも「ベストを尽 くしてほしい」という気持ちのあらわれですね。
と、少しカッコよくいい過ぎですか?

話を整理しますね。まず、「コストダウン」と「グレードダウン」は違うということ。
そして、「コストダウンには限界がある」ということ。
で、ココで話が終わっちゃうと……。
「何だ、結局コストダウンできないのか」ということになってしまいます。
いーえ、ちゃんとできるのです。

結論を言います。それは、「あなたが覚悟を決めること」なのです。
業者さんの限界を超えて、「コストを下げる」ためには、もう何かをやめるしかない のです。
「それだったら、グレードダウンと変わらないじゃないか!」と思いますよね。
でも、ちょっと違うのですね。
その方法は、大きく二つ。
ひとつは、自分でやること。業者さんがあらかじめ用意しているモノを使わずにつま り自分で作る。つまり、業者が用意したものを省き、自分でコツコツと作っていく。
もうひとつは、工夫をすること。
いうまでもなく、いずれの方法も余分な苦労と手間がかかってきます。
そうです。苦労と手間をかけさえすれば、コストを下げ、しかもより良いモノを作る ことが可能になるのです。
アレもほしい、コレもほしい、苦労するのはイヤ、手間もかけたくない、安く上げた い、しかも、世間でよくある家と同じようなカタチじゃなきゃイヤ……というのは、 ハッキリ言ってわがままな話です。
コストを抑えるなら、例えば、フツーは溝の素材に使うU字側溝をひっくり返して、 ポーチの階段にしたり、玄関の床をタイルじゃなく、モルタルにしてみたり……、思 いきった発想の転換が必要だと思います。もちろん、そこには「工夫」や「デザイン 力」が不可欠です。

ご安心ください。
もしあなたが、苦労と手間を惜しまず、より良い家を建てたいというのなら、そこか ら先の工夫は、一度私たちにおまかせしてみてください。それが、設計者である私た ちの仕事であり、また腕の見せどころでもあるのですから。

さあ、腹をくくってください。いっしょに苦労しましょう、いっしょに工夫しましょ う、そして、その苦労や工夫の分だけ、「その他大勢の家」よりも、もっと良い家を 作りましょうよ!



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