第十二話 こんなに変わっていくのだ。プランづくりの実例 その1

ここまで、設計、プランづくりに関して、いくつかのお話をしてきましたが、要は、 「もっと、自由に、苦労して、工夫して、あなたにとっての最高の家を作りましょう」 ということです。

ここでは、どのように、「自由に、苦労して、工夫して」、ひとつのプランを作り 上げていくか、ある家の具体的なプランの例をあげて紹介していきます。

まず、ここは、約六十坪の土地です。広いですねー。うらやましい。
お客さんの要望は、「まあ、子どもたちも独り立ちしたことだし、夫婦ふたりでの んびり暮らせればいい。広さもそんなにいらない」、とのこと。
さほど、大きな要望はないようです。

で、図1のように、必要最低限の機能を並べる。


一階に広めのリビングダイニングとキッチン、トイレにバスルーム。で、和室。二 階は、主寝室と来客用の洋室がいくつか……。で、収納を間にパラパラと。 玄関に は、吹き抜けもあって、まあ悪くない。
で、これら、必要最低限の機能をレゴブロックのように並べる。ただ並べる。
結果、チラシなんかでもよく見かけそうなプランになるのですね。

コレって、何だかつまらなくないですか?
つまり、必要な部屋と機能を「置いただけ」なのですねー。
でも、住宅メーカーさんの営業マンが、方眼紙の上に、「ただ置いただけ」のこの プラン。決して間違ってはいない。最低限の要望も満たしていますしね。
で、極端な話。意味、このようなプランというのは、否定しにくい。おまけに、予 算にも納まっている。
で、「このプランを元に……」と、こまごまと修正を加えて、システムキッチンや バスルームなどの設備や、内装や外観の仕様を決めて、ハイできあがり! というこ とも少なくないのです。もちろん、「こまごまとしたコト」にはそれなりの時間を使 うから、お客さんの方も、何だか、「色々検討したような錯覚」に。で、これまた 「満足したような錯覚」に陥る。
でも、実際には、基本的なプランは最後までほとんど変わらない。

私が言いたいのは、ココです。
あなたの要望をそのまんま聞いて(だって、まず何をどういう風に伝えればわから ないですよねー?)、何の工夫もせずにプランを作る。そんな提案の仕方をしている ところが多いのです。なぜならその方が、住宅メーカーさんにとっては、楽だからで す。


次の図を見てください。(図-2)
これは、同じ要望に対して、実際に私が最初に考えてみたプランです。

図-2 提案プラン(その1)

お客さんの要望が少なかったこともあって、「自由度が高い」=設計者としては、 「嬉しい!」。
「さあ、どう料理しようか」とウキウキしながら、考えたのを覚えています。
このプランのポイント、つまり私がこだわった点を、かいつまんで説明しますと……。

【一階】
  • 北側にあるアプローチから、明るい南側を見通せるようにする
  • 同じく、アプローチから南側のデッキまでの床に同じ素材(木)を使い、家の中心となるゾーンを作る
  • 風の通り道を作る
  • アプローチから、玄関スペースにかけて「明」から「暗」のメリハリをつける

    【二階】  
  • 書斎を、あえて寝室から離し、「隠れ家」や「離れ」的な位置づけにする

    と、大雑把にこんなところです。
    ね、ぜーんぜん違うでショ?

    でも、現実には、このプランをお見せしたときは、お客さんのさすがに少し驚いて、 「オモシロイんだけどなぁ……」とつぶやいたっきり黙り込んでしまった……。
    イイと思ったんだけどなぁ……。
    で、お客さんは、「ハッキリとした理由はないんだけど、もちょっとフツーの家が いいかなぁ」、と。確かに、わからなくは、ないデス、ハイ。


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